診療コラムMedical column

【第3回】父が胃がんといわれたら(連載全3回)

外科部長 平田 明裕 2025年01月10日 外科

父が胃がんといわれたら 連載第3回

皆さま、こんにちは。連載3回目です。コラムを執筆するのは慣れないですが、よろしくお願いします。
このコラムは父が前立腺の手術をしたことに着想を得て「父が胃癌になったら」というお話です。
実際の父は77歳で、胃がんではありません。フィクションです。

父が再発と言われるまで

父が手術してから、家に帰って安心しました。心配していましたが、結構食事もするし相変わらずウォーキングもするし「全然弱ってないじゃん。」と思いました。
母の話では、地域連携パスというものを勧められ、近くの開業医と手術をしてもらった病院で3か月毎に交互に見てもらっていたそうです。

手術してから2年経過しました。定期検査のCTで「大動脈周囲リンパ節再発が出てきた」と言われました。
(くどいようですがフィクションであり、父は胃がんになっていません。)

再発胃がんの治療法ってあるの?

再発胃癌の治療はあります。基本的には抗がん剤による治療です。
皆さんは抗がん剤にどんなイメージを持っていますでしょうか?私たちの世代だと、抗がん剤のイメージというと「世界の中心で愛を叫ぶ」でしょうか?透明なカーテンに囲まれて触れることもできず、みんな鼻に酸素の管をつけられ…胃癌の化学療法ではそんな光景はあまりありません。副作用もありますが、昔ほど悲惨なことはないと思います(実は私も小児期に抗がん剤をやっていました)。もちろん個人差がありますが、現在はいろいろな薬剤がでてきて治療の選択肢が増えています。(図1)

再発治療の費用はどれくらい?

抗がん剤はどんどん高額なものが発売され、年間1000万円以上のレジメンも多数あります。
こんなに高額なものはなかなか払えないですが、ほとんどの場合、高額療養費制度を利用します(図2)。
高額療養費の上限は年収によるようです。

再発治療は効果あるの?

結論からいうと、効果のある人が増えました。しかし、効果があるかどうかはやってみないとわかりません。免疫系の新しい薬剤などが登場して、効果のある人もかなり増えたイメージです。しかし、全員に効果があるわけではなく、中には抗がん剤をやっても病気が進行してしまう方もいます。

再発治療中は何に気を付けたらいいの?

定期的に会いに行って食事・運動ができているかチェックする。なんてことができたらすごいです。病状の把握までできたら最高です。治療がうまくいっているのかどうか母に聞いても全くちんぷんかんぷんです。
しかし、なかなか外来に一緒に行って経過を聞きに行くのも大変ですよね。仕事休んで行ったとしても病状説明されない日かもしれません。
医師に「次は家族と一緒に来て」と言われたら、家族も一緒について行って説明を聞いてほしいと思います。本人が家族に病状説明があることを言わない場合が厄介です。もし、それ以外で病状説明してほしい場合は、CTの結果説明のタイミングで一緒に行くのがベストだと思います。

再発が進行して、化学療法のやめ時は?

抗がん剤の効果が乏しい時や副作用強めの時は、化学療法を変更しますが、それでも効果が出ない時はやめ時です。
当院には緩和外科があり、再発した方には随時紹介します。化学療法中から緩和外科に紹介し、症状緩和しながら化学療法を行うのが当院での理想形です(私の考えです)。
病気が進行していくと食事量や活動量も減り、介護を必要としていきます。さらに、だるい・気持ち悪い・痛いなどの新たな症状が出現してきます。するとさらに介護量が増加します。介護のための入院は、どこの病院も簡単にさせてもらえないです。介護をひと休みするためのレスパイト入院は当院の緩和外科でも受け付けています(門戸が広いわけではありません)。
結局、可能な限り家でみることになりそうです。病状がすすんで、食べられなくなった時にどうするかとか、家族やキーパーソンで話し合っておくとよいのですが、私も「その時にどうするか」について自分の兄と話せていないのが現状です。

おわりに

「父が胃がん再発と言われたら」という設定で、化学療法のこと・費用・緩和医療のことなどを書いてみました。
連載3回ですが、以上でいったん終わりです。ありがとうございました。

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