【第2回】父が胃がんといわれたら
(連載全3回)
父が胃がんといわれたら 連載第2回
皆さま、こんにちは。連載2回目です。よろしくお願いいたします。
先日、私の父が前立腺の手術を受けました。母親と妻が手術に立ち会ってくれましたので、私は普通に仕事をしていました。
手術は3時間程度だったようです。その病院では、手術を待つ家族は大部屋に入ってひたすら手術が終わるのを待つスタイルだったのですが、他の家族もいて、「自分たちと違って深刻な手術の終わりを待つ家族かもしれない」と思うと、あまり会話もできなかったようです。(ちなみに当院の場合、家族はそれぞれ個室で待ってもらいます)
病院によっていろんなスタイルがありそうですが、もっと改善していきたいところですね。
さて、実際の父は77歳で、胃がんではありません。フィクションですのでよろしくお願いいたします。
手術後の合併症って何があるの?
合併症は特に合併症3つ、縫合不全、膵液瘻、胃内容排泄遅延があります。
ロボットになってから、ほとんど起きませんが、ひとたび起こると、入院期間は3~4週間に延長します。
縫合不全は食事を食べると胃液や腸液が漏れます。塞がるまで絶食・入院が必要です。
膵液漏は、膵液が漏れます。膵液がまわりの臓器を溶かして、腹腔内膿瘍・縫合不全・腹腔内出血の原因となります。
胃内容排泄遅延は、縫合不全や狭くなったりしていないのに何故か、流れていかない状態です。嘔吐したりします。鼻から管を入れなければいけなかったりします。(図1)
何回くらい病院に呼ばれるの?
母に状況を聞いてもちんぷんかんぷんでしたので、病院に聞きにいかなければと思いますが、そんなに仕事は休めないですし、何回くらい休まなければならないのでしょうか。
入院前の術前の説明、入院中は手術の日くらいで、あとは退院後の病理説明(手術でとったものを顕微鏡で調べてもらった結果)の3日くらいです。医師としてはこれだけ来てもらえれば助かります。
退院後の病理説明は病院や医師によって行われる日が変わってきます。ロボット手術後だと、病理の結果が出る前に退院になってしまうので、当科では退院後が多いです。あとは合併症が起きたり、緊急処置が必要なときに呼ばれたり、電話が来たりします。なるべく電話に出ていただきたいです。ご協力お願いいたします。
退院後は何に気を付けたらいいの?
父は「自分でしっかりやるからいい。」と言いそうですが、お腹すかなくても食事をして、運動と食事を継続することが大事なので定期的に会いに行って食事、運動しているかチェックできるといいですね。なかなかハードルが高いです。
高齢者の方は皆さま、胃の手術をしなくてもサルコペニア(*)の危険があります(図2)。サルコペニアは何かの拍子に食事摂取できないと、運動能力がどんどん低下してしまいます。生活能力が低下して食事をしなくなってのみこむ力(嚥下能力)もなくなり、ちょっと見ない間に急速に悪化して死亡することもあります。胃の手術後はサルコペニアに陥りやすいです。介護保険で訪問や通所によるリハビリや栄養指導はサルコペニアの予防になります。介護保険でサービスを受けられる可能性のある人は介護保険の申請をしておきましょう。申請方法が分からない場合はスタッフにお申し付けください。
そういう意味では、親が近くに引っ越して住んでくれるとチェックしやすいので多少は安心ですよね。しかし、ザ・昭和の父が近くに住むのは微妙です。毎日何か怒られそうで辛そうです。
(*)高齢になるに伴い、骨格筋の量が低下し、筋力や身体機能が低下した状態。(厚生労働省e-ヘルスネットより引用)
再発予防の抗がん剤を勧められるかもしれません
術後の説明を聞いて、病理結果でのステージを聞いておきましょう。
再発しそうかどうかある程度予想がつきます。ステージ2、ステージ3だと、再発予防の抗がん剤を勧められるかもしれません。
抗がん剤は副作用もあります。抗がん剤を行うかどうかは、本人の意思だけでなく、自分たちがどれほど関わってケアできるかですとか、本人がどれくらい元気でしっかりしているかなども考慮に入れるとよいでしょう。
私の父は、抗がん剤をやるかどうかは子供には相談せず勝手に決めそうです。
おわりに
「父が胃がん手術を受けることになったら」という設定で、手術の合併症、入院中の呼ばれる頻度(可能性)、退院後のことについて書いてみました。
次回は「父が胃がんで再発といわれたら」で書いてみます。