【第4回】膵癌の診断について
(連載全5回)
消化器内科医のつぶやき 膵癌の診断編 連載第4回
今回は診断方法についてです。診断の流れについてお話します。
膵癌の診断について
まずは診断の流れについて説明します。
3行でまとめてみます。
1) 健診の超音波で影をみつける
2) 造影CTで精査
3) 超音波内視鏡下穿刺生検で組織診断
はい、こんな感じです。
かなり運がよくないとこんな流れにならないですが、1つずつみていきます。
1) 超音波検査
超音波検査で影がみつかりました。
膵臓を黄色い線で囲んでみました。
そこに赤矢頭のような黒い影があります。
これは異常です。
ちょっと見えている場所をずらしてみます。
膵臓をまた囲っています。中に黒い筋が見えます。これは膵管です。膵管は普通は見えるか見えないか、というくらい細いはずです。それがこんなにしっかり開いて見えています。おそらく黒い影で見えたのが膵癌で、そのせいで膵管の流れが滞って、膵液が充満して膵管が開いたのだろうと考えます。要精査の判定をします。
2) 造影CT
腹部超音波で異常が指摘されたとしても微小膵癌をCTで発見するのはしばしば困難です。どこが膵癌か分かるでしょうか?
ここです。まあわかりにくいです。消化器内科医でも疑ってかからないと診断できません。ここで重要なのは転移がないことを確認することです。転移が無ければ手術で根治を狙えるかもしれません。祈るような気持ちでCTを確認します。
3) 超音波内視鏡
次に超音波内視鏡検査(EUS)を行います。EUSは分解能に優れ、CTで検出が困難な微小な病変も拾い上げることができます。胃カメラの先端に超音波が発生する装置がついている超音波内視鏡を用いて検査をします。胃カメラと同じように口から飲んでもらって、胃や十二指腸から膵臓をくまなく検査します。検査は胃カメラより多少時間がかかりますので、患者さんは基本的に鎮静剤で眠ってもらった状態で検査を行います。
下記のような画像が得られます。
赤い点線で囲んだのが膵癌の部分です。
CTよりずいぶん見やすいです。ここまではっきり見えれば十分診断できます。
腫瘍を認識できれば、細い針を穿刺して組織を採取することもできます。
これは以前EUS-FNAと呼んでいましたが、現在は超音波内視鏡下穿刺生検(EUS-FNB)あるいは超音波内視鏡下組織採取術(EUS-TA)と呼ぶことが多いです。
図のように超音波内視鏡で膵臓に細い針を穿刺します。何度か穿刺すると針の内腔に膵臓の組織が入ってくるので、それを採取して顕微鏡で細胞を観察して診断します。膵癌の細胞が採取されれば確定診断になります。侵襲が比較的少なく組織も採取できるいい検査です。
しかし超音波内視鏡検査は習得が難しく、施行できない施設も多いのが実情です。当院では常勤医が超音波内視鏡検査を施行できますので安心して受診頂けます。
いかがだったでしょうか?膵癌の診断の流れを説明してみました。
実際には思ったように検査できない場合ありますし、診断が難しいこともあります。患者さんの状態に合わせてスムーズに検査を進めていくことが重要です。専門医がいる病院でご相談頂くのをおススメします。次回は治療について説明していきます。