【第1回】父が胃がんといわれたら(連載全3回)
父が胃がんといわれたら 連載第1回
皆さま、こんにちは。
公立西知多総合病院 外科の平田です。
先日、仕事中に父から急に電話がありました。「前立腺の手術をする」とのことでした。昔から父は普段ほとんどしゃべらない厳格なタイプで「ザ・昭和」です。医療従事者ではありません。母に電話して病状を聞きますがちんぷんかんぷんでした。父は無事に手術を受け、入院中も多少のトラブルありましたが、結局、元の生活に戻ることができました。手術の日などは、結局私は病院に行っておらず私の妻に助けてもらいました。おかげで通常の仕事ができ、妻に感謝しています。
というわけで、父が胃がんになったらもっと大変だなと思い、「父が胃がんといわれたら」という設定で、私と同じ働いている40~50代に向けて、病状説明、手術、退院後などで抑えておくと良いポイントについて書いてみようと思います。
父は77歳で、実際は胃がんではありません。フィクションです。
父から「胃がんで手術受ける。今度、医師から説明があるから一緒に来てくれ」と電話がかかってきたら、いつ?仕事休まなければならない?お金は大丈夫?となりますよね。
胃がん手術の費用はいくらくらいなの?
図1は公立西知多総合病院で胃がんの手術を受ける場合のおおよその費用です。
がんの手術であれば、最近は腹腔鏡かロボットですかね。まだ開腹のところもあるかもしれません。だいたい9日の入院で、概算ですが3割負担で60万円前後。結局高額療養費制度を利用することになるので、自己負担額は9~10万円です。
医師目線でいうと、ロボットでできるのであれば、ロボットで受けた方が自己負担額は変わらないのでお勧めです。(図1、図2)
※手術にかかる費用(図1、図2)は異なる場合があります。
手術はどんな手術なの?
胃がんの場合、がんの場所・ステージによって治療法が変わります。今回の場合は手術するということなので、治癒できる見込みがあるのだと考えられます。進行癌の場合、手術は3種類です。図3に示しますが、腫瘍の場所によって切除範囲が変わります。(図3)
早期がんの場合はさらに2種類の姑息手術が選べます(図4)。
そもそも、進行がんとか早期がんって、胃がんの深さで決まります。(図5)
どこの病院でもきっと胃癌治療ガイドラインに沿って治療していることでしょう。手術の話を聞くときは、このステージを聞いてきましょう。
あとは、腹腔鏡かロボット手術か開腹か(図6、図7)
ステージが決まればだいたい治療法が決まります。あとはAからEの手術が、ロボットか腹腔鏡か開腹かがそれぞれ違う所でしょう。一般的に可能であれば、図6に示すように低侵襲手術の方が体に対する負担は少ないです。そして、腹腔鏡とロボット手術の違いは図7に示すように鉗子にはない関節がロボットにはあるため「奥から手前」の操作ができます。胃の手術では膵上縁のリンパ節を含む脂肪を取ってきますが、ロボットの方が簡単に取って来られます。
病院によってはロボット手術が始まっていないところもあります。がんが大きかったり、周りの臓器に噛みついていたりする場合は、腹腔鏡やロボットはせず、開腹手術と決めている病院もあるでしょう。個人的には、可能であればロボット手術がオススメです。手術時の出血も減りますし、合併症は起こりにくい印象で経過も良い印象です。
入院期間はどれくらい?手術時間はどれくらい?
患者さんの状態にもよりますが、私の父は77歳でほぼ毎日、ウォーキングを1時間程しております。死ぬまでに地球1周(4万km)歩くのが夢のようです。
肺気腫や糖尿病、心臓の病気、腎臓の病気などないので、通常1~2週間で退院になるでしょう。場合によっては1週間かからず退院のこともあります。
手術時間は4~5時間くらいでしょうか。がんの状態や患者さんの状態で2~3時間は前後すると思われます。ぜひ1日潰れるつもりで覚悟しましょう。
おわりに
「父が胃癌手術を受けることになったら」という設定で費用、手術の種類、入院期間について書いてみました。
【まとめ】
①胃癌手術の費用はロボットでも腹腔鏡でもあまり変わりません。(図1、2)
②胃癌のステージと、どんな手術をするのか聞いてきましょう。(図3、4、5)
③腹腔鏡手術かロボット手術か はたまた、開腹手術か聞きましょう。(図6、7)
次回は合併症から書いてみます。