【第1回】その頭痛、我慢していませんか? ―片頭痛でお困りの方へ―
我慢するのが当たり前になっていませんか?
「頭が痛いけれど、市販薬でなんとかしのいで仕事に行く」「せっかくの休日なのに、頭痛で横になり予定をキャンセルしてしまう」「頭痛をこらえながら、子どもの世話や家事をこなす」——そんな経験はありませんか?
片頭痛は、特に20~40歳代に多くみられる病気です。この年代は、仕事・家事・育児で忙しい時期であり、頭痛のたびに休むわけにもいかず、出勤はしていても頭が働かず能率が大きく落ちてしまうという方が少なくありません。頭痛を抱えたまま育児や家事をこなさざるを得ず、「休みたくても休めない」という方も多いのではないでしょうか。
それは片頭痛のサインかもしれません
片頭痛は、夕立のように急に強い痛みが起こる発作性の頭痛で、典型的には4〜72時間続きます。「ズキズキする」「脈打つように痛む」と表現されることが多く、片側だけでなく両側が痛むこともあります。光や音がつらく感じられ、体を動かすと悪化しやすいのも特徴です。吐き気を伴うこともあり、何度も嘔吐してしまう方や、頭痛が始まる前に「ギザギザした光」が見えるという方もおられます。「肩こりからくる頭痛だと思っていた」という方の中にも、実は片頭痛が隠れていることがあります。

市販の鎮痛薬でなんとかしのいでいませんか?
軽い片頭痛であれば、アセトアミノフェンやロキソプロフェンなどの市販薬で十分改善することもあります。しかし、それだけでは十分な効果が得られない片頭痛もあります。「薬を飲んでも、効くまで何時間も横にならなければならない」「薬を飲めば何とか仕事には行けるけれど、ほとんど仕事にならない」——そんな状態では、十分に治療できているとはいえません。片頭痛の治療のゴールは、単に痛みを我慢できる程度に和らげることではなく、できるだけ早く普段の生活に戻れるようにすることです。
鎮痛薬は早めに飲んでもよいのでしょうか?
「鎮痛薬を頻繁に飲むのはよくないから」と、痛みを限界まで我慢している方もいます。しかし、強い頭痛になってから服用すると、十分な効果が得られないことがあります。
片頭痛の急性期治療では、頭痛が軽いうちに適切な薬を服用することが、早く普段の生活に戻るための鍵になります。一方で気をつけたいのが、鎮痛薬を服用する日数がいつの間にか増えてしまうという悪循環です。

「薬剤の使用過多による頭痛」をご存じですか?
頭痛を抑えるために薬を繰り返し使用しているうちに、かえって頭痛が頻繁になることがあります。これは「薬剤の使用過多による頭痛(medication-overuse headache:MOH)」と呼ばれるもので、薬物依存とは異なります。頭痛薬を使う日が増えることで、かえって頭痛が起こりやすくなり、さらに薬を使う日が増えてしまう——このような悪循環に陥ることがあるため注意が必要です。
月に何日鎮痛薬を服用しているか、一度振り返ってみてください。「月の半分近く鎮痛薬を服用している」「毎週何日も頭痛薬が必要になる」という方は、一度お近くの医療機関に相談することをおすすめします。
片頭痛には、鎮痛薬以外の治療法もあります
「頭痛が起きるたびに鎮痛薬でしのぐしかない」と思っている方もいるかもしれません。しかし現在では、片頭痛治療にさまざまな選択肢があります。片頭痛専用の急性期治療薬(トリプタン製剤など)に加え、頭痛の回数が多い場合や、頭痛によって生活に大きな支障が生じている場合には、予防治療を検討します。従来から使用されてきた予防薬に加え、片頭痛の発症に深く関係するCGRPという物質の働きを標的とした治療薬も使用できるようになり、治療の選択肢は大きく広がっています。「毎回鎮痛薬でしのぐしかない頭痛」では、もはやなくなってきているのです。
自分の「頭痛のきっかけ」を知ることも大切です
片頭痛は、睡眠不足だけでなく眠り過ぎ、空腹、疲労、飲酒などをきっかけに起こることがあります。また、ストレスが強いときだけでなく、大きな仕事が終わった後など、緊張から解放されたときや、週末に起こりやすいという方もいます。女性では月経に関連してみられることもあります。すべてのきっかけを避けようとする必要はありませんが、頭痛ダイアリーなどを利用して「自分はどんなときに頭痛が起こりやすいのか」を知っておくことが役立ちます。
頭痛でお困りの方は、まずはお近くの医療機関にご相談ください
頭痛の頻度、持続時間、痛み方、吐き気や光・音への過敏などの症状に加え、現在使用している鎮痛薬の種類や、1か月に何日服用しているかは、片頭痛の診断や治療方針を考えるうえで重要な情報です。受診の際にお話しいただけるよう、メモしておかれるとよいでしょう。
「鎮痛薬でなんとか仕事はできるから」と、頭痛を我慢し続ける必要はありません。頭痛のために生活に支障が出ていること自体が、ご相談いただく十分な理由です。市販薬を服用する日が増えてきたと感じる方、鎮痛薬だけでは十分な効果が得られないと感じる方は、まずはお近くの医療機関にご相談ください。そのうえで必要に応じて当院をご紹介いただければ、神経学的診察や画像検査などにより他の病気が隠れていないかを確認しながら診断し、生活への支障度も踏まえて、急性期治療と予防治療を組み合わせた治療方針をご提案いたします。

頭痛と上手につきあうだけでなく、「頭痛に邪魔される日を少しでも減らす」ことを、一緒に目指していきましょう。

【執筆者】
脳神経内科主任部長 西田 卓
脳神経内科では精神的な問題からではなく、脳や脊髄、末梢神経、筋肉に原因があり、体が不自由になる病気を診断・治療しています。
まだ根治療法にたどり着いていない病気が多いですが、基礎研究・臨床研究の進歩が目覚ましく、新規の治療薬が多数開発され、注目されている領域です。
当院では患者さんの病歴、問診より的確な検査・診断を行い、標準的な治療を基本としていますが、個々の患者さんの病状にあった治療を行うよう努めています。
2020年8月より専門医および指導医の資格を有する常勤医1名が加わり、一部の患者さんの入院診療にも対応できるようになりました。
現時点では特に専門外来を設けておりませんが、今後はパーキンソン病や脊髄小脳変性症など専門性が高い神経変性疾患の患者さんや、頭痛やてんかん発作に困っている患者さんの外来診療に力を注ぐ予定です。
他の医療機関や社会福祉施設と連携して地域医療の一端を担いながら、地域の皆様に信頼・安心できる専門的な診療を提供し、患者さんや御家族様を支えていける医療を目指します。