診療科案内 外科
当科の概要
当科は常勤医師7名と呼吸器外科、肝胆膵外科、血管外科の非常勤医師4名で、様々な疾患の外科診療を行っています。その診療範囲は胃・大腸・肝臓・胆嚢・膵臓などの消化器疾患を中心に、乳腺疾患、甲状腺・副甲状腺などの内分泌疾患、肺・縦隔などの呼吸器疾患、末梢静脈などの血管疾患など多岐にわたります。
当科は内科と緊密に連携して正確な術前診断を行い、それぞれの患者さんごとにその病態に応じた適切な術式を選択することを信条としています。近年注目を浴びている鏡視下手術にも力を入れており、胆石症・そけいヘルニアなどの良性疾患の手術だけではなく、胃がん・大腸がんなどの悪性疾患の手術や、虫垂炎・胆嚢炎・腸閉塞などの緊急手術においても腹腔鏡下手術を積極的に行い患者さんへの負担が少なくなるよう努めています。
院の前身である東海市民病院と知多市民病院の両院では2014年に計645件の全身麻酔手術を行っており、その内訳は胃43例(うち腹腔鏡14例)、大腸90例(うち腹腔鏡45例)、胆嚢116例(うち腹腔鏡91例)、肝胆膵(胆嚢除く)29例、乳腺47例、鼠径部ヘルニア105例(うち腹腔鏡60例)、腹部緊急手術127例(うち腹腔鏡76例)などでした。
診療内容紹介
当科で主に取り扱う疾患とその治療についてご紹介します。
上部消化管(食道がん、胃がん)

胃がんに対する腹腔鏡下手術はすでに本邦の全手術数の36.6%を占めており(2011年、第11回内視鏡外科学会アンケート)、特に早期胃がんに対する腹腔鏡下手術はガイドラインで推奨される標準治療と位置づけられています。早期胃がんは切除すれば再発率が低いため、その治療においてはより患者さんへの負担を少なくすることが大切です。
当院では早期胃がんに対して腹腔鏡下胃切除術を導入しており、患者さんには目立たない傷と術後の回復の早さに満足していただいております(患者さんの病気の進行度や全身状態、体型により、開腹手術となる場合があります)。進行胃がんは再発率が高く、徹底した治療で術後の再発を予防することが重要になります。従来から行われている開腹手術で徹底したリンパ節郭清や多臓器合併切除を行い、がんの完全切除による根治性の向上を目指しています。
食道がんは比較的少ない病気ですが、患者さんやご家族とご相談しながら、それぞれの方に合った最善の治療を行っています。
下部消化管(結腸がん、直腸がん)
大腸がん(結腸がん、直腸がん)に対する腹腔鏡下手術はすでに全手術数の47.3%と約半分を占めており(2011年、第11回内視鏡外科学会アンケート)、特に早期結腸がんに対する腹腔鏡下手術はガイドラインで推奨される標準治療と位置づけられています。当院では結腸がん、直腸がんに対して腹腔鏡下手術を積極的に行っており、患者さんには目立たない傷と術後の回復の早さに満足していただいております。
早期がんだけではなく進行がんでも病状を十分にご検討させていただき、可能である方には腹腔鏡下手術を積極的に行っています(患者さんの病気の進行度や全身状態、体型により、開腹手術となる場合があります)。
肛門に近い直腸がんでは残念ながら肛門が残せずに人工肛門となってしまう場合もあります。当院では可能である方には積極的に内肛門括約筋切除術(inter-sphincteric resection:ISR)を行って肛門を温存するよう努めています。この手術はこれまでは人工肛門となっていた肛門ぎりぎりの早期の直腸がんに対して、腸と肛門とを体外から吻合することで肛門を温存する術式です。
また残念ながらどうしても人工肛門が避けられない方でも、病棟には常勤の皮膚・排泄ケア認定看護師を有しており、術後も日常生活を快適に過ごせるようにサポートをさせていただいております。

胆のう(胆石症)
胆石症とは、胆汁の成分が胆のうの中で固まって石ができる病気です。無症状で小さな胆石症の場合は様子をみても問題ありませんが、大きな石や、おなかが痛むなど症状のある胆石症は、放置しておくと胆のう炎、胆管炎や膵炎の原因となるので手術をおすすめします。
胆石症に対しては、現在ではほとんどの病院で腹腔鏡下手術が行われていますが、当院では積極的に単孔式腹腔鏡下手術を行っています。単孔式腹腔鏡下手術とは、これまでは4つの小さな穴を開けそれぞれからカメラと鉗子(マジックハンド)を入れていたのを、おへそに1つだけ穴を開けてまとめて入れるようにして手術を行うものです。傷の数を減らすことでよりおなかの傷がより目立たなくなります(患者さんの病状や全身状態、体型により、通常の腹腔鏡下手術や開腹手術となる場合があります)。

そけいヘルニア(脱腸)

そけいとは太ももの付け根の場所をいい、そけいヘルニアはそけい部をおおっている筋肉のつなぎ目の部位が年とともに弱くなり穴が空くことで、その穴から腸や内臓脂肪がおなかの外に飛び出してくる病気です。
一般に「脱腸」とも呼ばれており、症状はそけい部が丸く盛り上がり、不快感や痛みを伴うこともあります。腸が飛び出したまま戻らなくなることを「ヘルニア陥頓(かんとん)」と呼びます。この状態のまま放置すると腸の血流が止ってしまい、いずれ腸が腐って穴が空き腹膜炎になります。この場合は緊急手術を行い腸管の切除と腹腔内の洗浄を行ないますが、時として命にかかわります。
そけいヘルニアは手術以外に根本的な治療法はありません(薬やバンドで治ることはありません)。手術の方法は病院によって様々ですが、当院ではおなかを切らずに小さな穴から行う腹腔鏡下ヘルニア修復術を行っています。具体的には全身麻酔でおなかに3つの小さな穴を開けて、そこからカメラと鉗子(マジックハンド)を入れて、体の内側からヘルニアの穴をメッシュシートで被いふさぎます。この手術の特徴として、おなかを切る方法に比べて術後の痛みが軽度であること、大きなメッシュを使い広い範囲で筋肉のつなぎ目を被うことで一度に治すことが可能であること、さらには反対側をカメラで観察することでもし反対側にヘルニアになりそうな穴があったら同時に手術が可能であることなどが上げられます。
そけいヘルニアは放置しておくと徐々に大きくなり、手術が困難になったり、ヘルニア陥頓となり命にかかわったりするため、症状が出現したら早めの手術をおすすめします。
肛門疾患(痔核)
肛門疾患で最も多いものは痔核です。痔核とはいわゆるいぼ痔のことを言い、肛門の内側にできる内痔核と外側にできる外痔核の2種類があります。いずれも肛門内にある静脈が拡張したもので、症状は脱出、出血、いぼが触れるなどです。血栓性外痔核といって血液がうっ血して固まってしまい大きくなったものや、内痔核が飛び出して挟まってしまったものは痛みを伴うことがあります。
外痔核は大きかったり、血栓性外痔核で痛みを伴ったりしたものは手術で切除します。内痔核は少量の出血や違和感だけであれば座薬で様子を見ることが多いですが、大量に出血したり、大きくなり飛び出たりしてしまう場合は治療が必要です。手術で切除する場合もありますが、当院では硬化療法(四段階注射法、ジオン注)で切らずに治す治療も行っています。硬化療法は手術と比べて痛みが軽度であり、また日帰りでの治療も可能です。
デリケートな部分のご病気であるので、誰にも言えずに悩んでいる方が多いのが現状です。お困りの方はぜひ一度当院の外科にご相談ください。

その他の診療内容
手術で切除できないがん(胃がん、大腸がん、乳がん)に対して、外来化学療法室で抗がん剤治療を行っています。常勤のがん化学療法看護認定看護師のもとで、安心して抗がん剤治療を受けていただけます。
虫垂炎・胆嚢炎・腸閉塞などの腹部救急疾患については、夜間、休日であっても救急外来と連携して24時間体制で診療および緊急手術に対応します。西知多地域で唯一の救急病棟および集中治療室を兼ね備えた基幹病院として責任を持って治療にあたりますので、いつでも当院にご相談下さい。
常勤医師紹介
役 職 | 氏 名 | 主な認定資格 |
院 長 (乳腺外科兼務) |
吉原 基 | 日本外科学会外科専門医 日本消化器外科学会認定医 日本乳癌学会認定医・乳腺専門医・乳腺指導医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 臨床研修指導医 緩和ケアの基本教育に関する指導者研修会修了 マンモグラフィ検診精度管理中央委員会検診マンモグラフィ読影認定医 日本乳がん検診制度管理中央機構乳房超音波講習会受講修了 がんのリハビリテーション研修ワークショップ修了 日本DMAT隊員 緩和ケア研修会修了 |
診療部統括部長 外科部長 臨床研修センター長 健診センター長 |
青野 景也 | 医学博士 日本外科学会外科専門医 日本外科学会外科指導医 日本消化器外科学会消化器外科専門医 日本消化器外科学会消化器外科指導医 日本乳癌検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医 日本医師会認定産業医 |
外科主任部長 | 服部 正興 | 医学博士 日本外科学会外科専門医 日本外科学会外科指導医 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医 日本消化器外科学会消化器外科専門医 日本消化器外科学会消化器外科指導医 東海外科学会評議員 日本DMAT隊員 ドクターヘリ従事者研修(基礎コース)修了 臨床研修指導医講習会修了 がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修修了 |
外科部長 | 平田 明裕 | 医学博士 日本外科学会外科専門医 日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医 |
外科部長 外来化学療法センター長 |
篠原 健太郎 | 医学博士 日本外科学会外科専門医 日本消化器外科学会消化器外科専門医 日本消化器外科学会消化器外科指導医 日本消化器外科学会消化器がん外科治療認定医 日本乳がん検診精度管理中央機構検診マンモグラフィ読影認定医 臨床研修指導医講習会修了 緩和ケア研修会修了 |
外科医長 | 伊藤 量吾 | 緩和ケア研修会修了 JATECコース修了 |
外科医員 | 岩清水 寿徳 |