非公開: 病院だより第15号 “口腔がん”ってどんな病気?
歯科口腔外科部長 松本行史
発生部位
歯以外、口の中のどこからでも発生します。その中で舌がん(図1、2)が最も多く、上下歯茎の歯肉がん(図3、4)、舌の下側の口底がん(図5)、頬の内側の頬粘膜がん、上あごの内側の口蓋がんと続きます。(※図1~5 日本口腔外科学会HPより引用)
特 徴
口の中は、見る、触る、ことができますので、がんの発見は比較的容易です。
がんは、表面がいびつな形をしていて出血しやすく、硬いしこりを触れるのが一般的です。ただし、口内炎や歯周病などと見分けがつきにくい場合もまれにあります。
初期から痛むこともありますが、ある程度進行しなければ痛まないことも多いです。
また、口とつながっている食道、胃、肺などにがんが合併(重複がん)することも15%ほどあるとされています。
罹患率
近年では10万人に7~8人と、ここ40年で3~4倍近い患者数になっていると言われ、稀ではなくなっています。また、好発するとされている60~70代の男性だけでなく、女性や若い人の口腔がんが増加傾向にあります。
進 展
がんは発生した場所で増大します。転移はまず首のリンパ節に高頻度で起こり、その後血液の流れに乗ると遠隔転移します。遠隔転移の最初の好発部位は肺です。これらの程度、有無により、ステージ分類がされます。
治 療
初期であれば、がんの周囲に余裕(安全域)を設けて切除をします。
首のリンパ節転移がある、もしくは疑われる場合はリンパ節群の除去を併せて行います。
切除範囲が広い場合は、それを補う再建術も行われます。
ステージやがんの状態により、化学療法や放射線治療を併用します。
要 因
代表的なものは喫煙です。喫煙者の口腔がんの発生率は非喫煙者に比べ、約7倍も高いとされます。本人だけでなく、二次喫煙、三次喫煙で他人のがん発生リスクも高めます。加熱式タバコ、電子タバコも例外ではないだろうと考えられています。海外ではたばこのパッケージに写真入りの警告表示がされています(図6)。
多量の飲酒も原因とされています。近年では性的交渉によるヒトパピローマウイルス感染もリスクを高めるとされています。
他にも不潔な口腔衛生状態、適合の悪い被せ物や入れ歯、虫歯で尖った歯、歯並びの問題などにより、口の中の粘膜を慢性的に刺激することも原因として考えられます。
最後に
口の中のセルフチェックやケアを、普段から心がけるようにしましょう。
かかりつけ歯科をもち、定期的に口の中の診察を受けることが口腔がんの予防、早期発見につながります。もしも問題が見つかった場合は、当院を紹介してもらいましょう。